インターネットすやすや

嘘ときどき現実、見方により法螺話となるでしょう

いつかアフィリエイトでI LOVE YOUを

例えばわたしのAmazonのアフィリエイトを踏んで
「ムーニー おしりふきやわらか素材 詰替 80枚×8」とか
「自分以外の全員が眠った世界で、女子高生たちを種付け孕ませヤリたい放題! [DVD] 」とか
「明るい貯金生活家計簿2013」とか
「上・中級公務員試験 20日間で学ぶ物理・化学(数学)の基礎」とか
「あなたがほしい je te veux (集英社文庫)」とか
買っているひとたちのことを想像するのはとてもセクシーで楽しい。


きっと愛の言葉だってアフィリエイトを経由して囁ける。
「月が綺麗ですね」でも「わたし、死んでもいいわ」でもなく。
だって21世紀だからね。

はつ恋 (新潮文庫)

はつ恋 (新潮文庫)

Only today

「土曜日、ひま?」
「ひま…だと思うけど」
「じゃあちょっと付き合ってよ、妹の誕生日プレゼント選ぶの手伝ってくれない?」
「あー綾乃ちゃん。随分会ってないや。元気?」
「元気だよ、寒くなってきたのに元気に生足出してるよ」
「女子高生は人類最強の生きものだからね」
「兄はもう立ち向かえないよ」
「選ぶのはいいけど、去年もわたしが選ばなかった?」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
「まぁ綾乃の事知ってる女友達お前くらいしかいないから必然的に…」
「むしろ誕生日祝いに行くかー、おばちゃんにも会いたいなー」
「来る?来週末」
「うーん、でも来週は無理」
「あー、あいつ、誕生日か」
「そう」
「プレゼント買った?」
「ううんまだ。だいたい決めたんだけど迷ってる。土曜日相談させて」
「俺に相談するほどでもなく、なんでも喜ぶと思うよ」
「プレゼント行為が発生するイベント、付き合ってからはじめてだから緊張しますよ」
「確かになー」
「わたしより長くお付き合いのある方にぜひアドバイスをいただきたく…」
「今週は会わないの?」
「土日どっちも試合だってー」
「がんばってるねえ、あいつも高校でやめるかと思ってたけど俺と違って偉いわ」
「クリスマスわたしバイトだし」
「じゃあ誕生日が勝負だね」
「そういえば、クリスマスどうするの」
「うーん別に…」
「わたし抜きで2人で過ごしてもらってもいいよ?バイト終わったらチャリで合流するわ」
「男2人でクリスマスの街で何をしてろと」
「カラオケ?」
「合コンだったら?」
「それはちょっと困る!」
「予定ないからそれはありかもと一瞬思ったけど、でも明らかにおふたりの邪魔だから自制します」
「早く彼女つくれよー心配だよー」
「そんなこと言われてもなかなか」
「来年の綾乃ちゃんの誕生日プレゼントは違う子に選んでもらってくれ」
「彼女できたらパンケーキ食べに行ってもらおう、男1人じゃ行けない」
「えっむしろわたし行きたい!彼女じゃないけど!」
「わざわざ言わないでも知ってるから」
「恋人同士でも、甘いものあんまり好きじゃない人とは一緒に行けないじゃないですか」
「確かに、並んでまで生クリームと小麦粉食べたくない、とか拒否りそう…」
「そうそう、目に浮かぶよ…」
「じゃあ、あそこ行くか、めっちゃ混んでるらしいけど」
「海の近くの?」
「天気もよさそうだしいいじゃん、砂浜にも出られるし」
「なんでこんな真冬に海…」
「すげー昔に行ったよね、遠足か何かで」
「同じクラスだったとき?」
「そうそう、江ノ電でうるさくて怒られたとき」
「もう10年も前じゃん、じゅ、じゅうねん……」
「ビビるわ、人生の半分を知ってるってことか…」
「長期にわたりいろいろ甘えまくりですみません」
「そう?甘えてられてたっけ?」
「いっつも助けてもらいまくりですが」
「まぁ、とにかく、とりあえず、いてくれればいいから」
「えっ?」
「土曜日、13時に横浜ね」


Only today - AKB48

忘れられる権利

Facebookの写真のタグ付けをすべて拒否してから随分生きやすくなった。
プロフィール欄に写真が1枚も出ないようにした。数年間にわたる数百枚の写真をどんどん遡って、自分の名前との紐付けを解いていく作業には不思議な恍惚感があった。写真を消したいわけじゃないの、いろんなものが結びつくのが嫌なの。クリック一発で、したためた文章も吐き出してきた感情も顕在化された友達も、すべて消失できるインターネットがすき。
忘れられる権利、なんて文学的な響きなのでしょう。思い出は黒いのも白いのも、笑い飛ばせるのが一番健全ね。記憶の中だけで満足。オブラートに包んで、エレガンスにごくり。ごちそうさま。

わざとわすれる

「知り合って何年だっけ?」

「うーん、10年くらい? 中学から知り合いだから」

「わたし中学の知り合い、地元では会うけどわざわざ東京では会わないや」

「まぁそうだよねえ、そもそもそのころの知り合いでまだ会う人自体、少ないんだよね、転校もしたし」

「それでも続いてんのすごいね」

「続いてるっていっても…年に2回くらいしか会わないけど」

「でも仲いいよね」

「仲いいをどう定義するかによるけど」

「例えば来週どう?って言われて、会う気にはなるんでしょう」

「そうね」

「そういう意味、なんとなくお互いに会うリズムが決まってて誘ったり誘われたりするのを待ってるって意味」

「それは、そうだね」

「会って何話してるの?別にいまの環境が近いわけでもなくて」

「うーん、いざ聞かれてもわからないけど、普通わからなくない?」

「そうね」

「そうでしょう」

「よく続くねえ」

「お互いがお互いに興味ないから、気が楽なんだよ」

「どういう意味?」

「積極的にお互いの人生に関わる気がないってこと」

「よくわからない」

「例えば相手が今どんな仕事してるかとか、どんな女の子と付き合ってるとか、今年の目標はどうだとか、飲み屋でわかれたあと電車でどの駅で降りて誰の家に行くとか、そういうこと全然気にならないってこと」

「えー、そういう話以外どんな話するの」

うるう秒とかヒッグス粒子とかカッターシャツの綺麗なアイロンのかけ方についてかな」

「嘘つけ」

「話したい時は話すよ」

うるう秒?」

「ううん、立ち入ったプライベートなことも」

「そりゃあね、友達だったら」

「うーん、そういう感じじゃない、友達の条件、って感じじゃない」

「どういう意味?」

「わたしたち一緒にいると、相手のために話してない。自分の話したいことしか話してない。究極的に相手の言ってることあんまり聞いてない感じがする」

「聞いてなかったら会話にならなくない?」

「いや聞いてなくないんだけど。もちろん」

「わかってるよ」

「聞いたこと忘れちゃうわけでもないけど、積極的に掘り返さないよ。2人だけに通じる内輪なネタにはする。ネタとして昇華した時点でもうフィクションに近づくから」

「とても文学的ですね」

「嘘でもホントでもどっちでもいい話しかしてない、リレー小説みたいだ、でも全部ひとりごと、みたいな」

「はあ…昔から?」

「いやー別に。中学生の時ってなんとなく男女で仲良くしにくくなかった?」

「じゃあ東京来てから?」

「そうねえ、もっと言うと、酒を飲むようになってからだなあ。酒があると空想と現実があいまいになってきてすごくいいよね。本気度が微妙になって。どんなくだらないこと言ってもまともなこと言っても全部、酔っぱらいの戯言、に帰結」

「アルコールないころ、何を考えてたんだろうってたまに思う」

「酒もないのにファミレスに6時間くらいいたよね」

「いたいた。死ぬほど話してた。あのエネルギー不思議だ」

「今もわたしたちはそんなふうに延々とだらだら話してるんだけど、テンション超高いときと、異常に低いときがあるんだよね」

「へえ」

「なんとなくチューニングできるから、そこに他人を巻き込める自信ないから、いつも2人でしか会わない」

「えーっとその…恋愛関係ではないの?」

「それは今までもこれからも絶対にないね」

「よかった」

「なんでよかったなの?」

「男女2人でいて行き着く先が恋愛しかないんなら世界に絶望しちゃうから」

「お互い、入れ込む気がないから恋愛にならない。相手が自分に興味ないってわかってるから話せることってあるんだよね。上手に忘れてくれる。うそ、忘れたふりをしてくれる」

「歪んでていいね」

「褒め言葉ね? ありがとう」

「まっすぐでまともな関係なんてスーパーの野菜売り場に置いて帰ったらいいよ」

「愛はコンビニでも買えるしなー」

「あなたたちも愛のある関係に見えますよ」

「世界はそれを愛と呼ぶのかしら」

「愛じゃないなら?」

「今度までに考えとく」

LIFE-LINE-DEAD

そういえばLINEをいれたんだけど、こないだすごいことがあって。

あれさぁ、接続すると自分のアドレス帳の知り合いがどんどん出てくるじゃない。しかもニックネームだとか本名だとかまぜこぜで登録されるじゃない。

わたしアドレス帳全然整理してなくて、中学の知り合いとかまだいっぱい入ってるわけ。LINEに並ぶ名前をパラパラ見てたら、死んじゃった知り合いの名前があったの。超びっくりして。なにこれ。あ、別に近しい仲だったわけじゃないんだ。中学の卒業の時、なんとなくいろんな人とアドレス交換するじゃん。あの頃Facebookとかなかったし、mixiも使ってなかったし、つながる手段って圧倒的にケータイだったから。とりあえずした、くらい。名前と顔は覚えてる、でも教室以外で会ったことは、きっとないの。彼、数年前に事故でなくなったのね。大学3年かな。えっと、わたしそのとき留学してたから、うん、あってる。だから葬儀とか行けなくて、人に聞いたんだけど。同じような年の、同じ場所で空気吸って会話も交わした人がこの世からいなくなるって、はじめてで。ぞわっとした。この程度の仲で泣くのも失礼でしょう、だからどう収拾つけたらいいのかわからないよね。失礼な話だけど喪失感とか悲しさとかとも違うよね。強いて言うなら、人は案外簡単に死ぬんだなーっていうかさ。唐突に。実感もなく。ケータイから消そうにも、消せないじゃん。当時彼がすきだったバンドの名前をもじったメールアドレスとか、消せないじゃん。恋? いやいやそんなんじゃなくて。もっと中学生でいた時間全部への哀愁っていうかさ。そういうぼんやりしたものだよね。かぶさってきてたものは。

で、まぁ、LINEで彼の名前を見つけたのよ。「友達かも?」とか言われて、えええっ、て思って。こわいっていうか不思議だった。SFみたいじゃない? 天国にメッセージ送る、みたい。あるいは「ほしのこえ」? セカイ系すぎるね、うんうんごめんごめん。電話番号がデータベース化されてるって調べたらすぐわかったんだけどさ。電話番号って、最近は使いまわされてるんだねえ。彼はわたしとアドレス交換したあとにケータイ変えてたかもしれないし、もう違う人が使ってても全然おかしくないよね。あーなるほどな、以前のこの「番号」の持ち主が今この世にいないことなんてまったく知らないまま、使ってる人がいるんだなぁって思って、ちょっと不思議な気分になった。データでは交わってるのに、絶対に交わることのない人たち。漫画みたいねこの言い方。大仰すぎる? わざとだよ。

そんなことをぼんやり考えてたらさ、彼から少し前に、着信履歴が残ってたんだよ。心臓止まりそうになった。わたしついに天国への扉ひらいちゃったの!? って感じですよ。はい、言い過ぎたね。まぁ呆れないで聞いてよ。あ、彼って、アプリ上の“彼”ね。もちろん違う人だよ。名前も住んでる場所も年齢も知らないし、別にいらないし。名前だけ“彼”ならそれ以上の情報は野暮。数日は放っておいたんだけど、その時すごい暇してたから、つい出来心でメッセージ送ってみたんだ。なんか10年前の掲示板とかチャット文化みたいでドキドキした。「こんにちは、いきなりごめんなさい、○○くんですか?」って。違うに決まってるんだけど。だってもう死んでるし。わたしはそれを知ってるし。

返事来ないだろうなーって思ってたら来てさ。「ごめんなさい、違います。あなたは△△さんですか?」って。違うんだけど。こっちも違いますって返して。さすがに終わりだろって思ったら、向こうも暇だったんだろうね、また返信来たんだよ。

「すみません、中学の頃付き合っていた彼女の名前で表示されて、ちょっと驚いて電話してしまいました。全然関係ないですよね、ご迷惑おかけしてすみません」。

……うわーって感じだよ。すごくない?

わたしは死んだ彼とメッセージしているように見えてて、彼には昔のーもしかしたら初めて付き合った子かもしれない、初恋の女の子かもしれないー彼女とやりとりしているように表示されてるんだよ。なんか、すごいじゃん。こうなると実体なんて飾りだよね。ディスプレイに表示される名前の密度と迫力だけが、異様に強い。“本当の”相手が誰かなんてもうどうでもよいよね。自分がそう信じちゃえば相手はその人になるね。名前って、強いね。この感覚はじめてで、すごかった。

そこで、そうです△△です、って答えてたらどうなってたのかなぁとかちょっと思う。何食わぬ顔で他人の名前を語って話しても、気づかなかったかもしれないね。もしかしたら思い出をめくり返す方が一瞬でも幸せになったかもしれないなーとか。わたしは“彼”が死んでることを知ってたからそんな風なこと求めていなかったけど、思い出の中の人がどこかで元気で生きてることを祈った、わたしのディスプレイには死んだ“彼”の名前で表示されてる男性の期待は宙に浮いちゃったな、とか。出会い系のサクラとか、こんな感じで他人の人生に関わるのかしら。なんて、下衆な方に話を持っていくのはやめるけど。でもそうやって救われる人、もしかしたらいるかもしれないね、って。

え、そのあと? 別にどうもならないよ。漫画だったらどうにかなるんだろうけど。さすがに、そこまで現実はファンタジーじゃないね。でも、メール送ってる相手がどんな人かなんて、生きてるか死んでるかなんて、実はわからないよねえ。普段も。そう思うとちょっとファンタジック。

っていう、おもしろがってもらえる人の範囲が超狭い話でしたー。

咳をしてもうたた寝しても

「あ、そっかあ、もう一人暮らしじゃないんだ」

「そうなんだよ、だからなかなか家呼べなくてごめんね、まぁでもだいぶ落ち着いたから、また来てね」

「うん行く行く、念願のしあわせ家族生活を覗きにいく」

「はい!念願のね!」

「ほんとだよ、昔からずっと言ってたよね」

「夢は叶うんだね!すばらしい。今まで生きてきてよかった。のろけますが史上最高に幸せです!!!」

「どうですか、そんな生活は」

「やっぱりあれだね、家に帰ってもひとりじゃないっていうのはちょっと気分が明るくなるよ」

「うんうん」

「というか、帰る気になる、呑み歩いてふらふらで帰ってくることが減りました」

「健全で幸福な生活を手に入れたおねえさんに拍手」

「帰ってきてごはん準備しないといけないとか、仕事遅くなっちゃったりするとごめんごめん許してねって思いながら急いで帰るとか」

「帰ってすぐに、ただいま!って抱きつくのでしょう?」

「抱きつくね!もちろんね!!」

「はいはいうらやましいうらやましい爆発しろ」

「ほら、健全な肉体に健全な精神を宿らせたいじゃないですか、精神安定じゃないですか」

「うんうん」

「家にいるときあんまりイライラしなくなった。安心感?包容力? あれよく考えてみたら実際包容してるのはわたしなんだけど…まぁいっか…」

「休みの日とか何してんの」

「いっしょに出かけるよ」

「超インドア派なあなたがどこに…」

「一人じゃなくなってから、近くにいいカフェを見つけて通うようになった」

「おしゃれ~~」

「テラス席とかで本読んだりしておしゃれライフしてる」

「楽しそう、うらやましい」

「旅行とかは行きにくいんだけどねえ、でもあったかくなったら一緒に行きたいなー」

「そうだよねぇなかなか都合が」

「そこまでの移動もそうだし、だめなところも多いからさぁ」

「今度どっか連れてきてよ、わたしも会いたい」

「いいよいいよ。仲良くしよう」

「うーん、いいなぁ、わたしもそんな子がほしい!!!!ください!!降ってこい!!!」

「うける」

「いやー、でもずっとわたしも飼いたいんだよね、いぬ」

「めっちゃかわいいよ。しかし、独り身のさみしさは軽減するけどな!それがいいか悪いかは測りかねます!」

「うむそれはそうでしょうね、安易に想像がつきますね」

「恋をとるか癒しをとるか」

「お姉さんは後者を?」

「いやわたしは二兎を追いたいんだけどね」

「…」

「人生ままならないね」