あるいは画面越しの優しさについて
「チャットすきなの?」
「なにいきなり…まぁ、そうですね」
「だっていまTwitterに書いてたじゃん」
「捕捉はやいw はい、すきですね」
「なんで? 見てる限りメールはすきじゃなさそうですけど」
「はいはいその件に関しては返すってば、すみません!!! …なんでだろう同じ時間共有してる感?」
「ケータイメールでも電話でもそうじゃない?」
「電話は相手によるよね、すきの度合いが。楽しい時は楽しい」
「あそう。どっちかというと苦手かも」
「うん苦手そうw Skype通話も?」
「Skypeのほうがまだいい」
「音よりテキスト」
「モノより想い出、みたいだな」
「SkypeもFacebookチャットもGtalkも、“今相手が打ち込んでいます”って、出るでしょう、あれぞくぞくするよね。違う場所で同じテキストボックスを見ているって、なんかいいよね」
「いいよね、わくわくするよね。待たされる感が。」
「電話は聞くか話してるかだから、ちょっと疲れるね」
「確かにチャットは沈黙も脱線も『ごめん今トイレいってた』も許されるよな」
「そうそう、それ大事だね。ながら、でできるのがすきなんだと思うわ」
「その心は」
「あるひとつのことに集中してあなたにだけ今対峙してるよ!みたいな方が優先されてる感あるっていうのもわかるけど、わたしはお互いいろんなことしながらだらだらとツーカーなほうが、今見ているものを一緒に教えてもらったりするほうが、楽しいな。特別一生懸命伝えたいことなんて普段あまりないし、もしそうだったらオフラインで会ってるだろうし」
「ふうん よくわからん」
「うわ、この猫画像かわいいね」
「なに? Facebook? お前も捕捉はやいな」
「今さらそこ突っ込む? うん、今シェアしてたやつ」
「かわいいよねー、友達が貼ってたから再共有した」
「そういえばこの前こういう系の猫のかわいいのひろったよ」
「え、見たい、送って。いぬはさっぱりめがかわいいと思うけど猫はふわふわがすきだ」
「ん、今貼りました」
「うむ、かわいい。保存した」
「こういうとこがすき。」
「“こういうとこがすき”?」
「そう。……ええと、チャットのね」
「今みたいな?」
「そう、いろんなメディアが一気にかぶってくる感じ。電話はなんだか、許されなくない?なに今あなたわたしと電話しながらFacebook見てたの!?キーッ!って、相手によってはなりかねないじゃん」
「なるほど、確かにそうだ」
「Skypeもファイル送ったりURL貼ったりできていいよね」
「いつもかわいい女の子とか猫の写真送ってくれてありがとう」
「“そういうとこがすき”?」
「…よし、ツイートしとこ、そういうとこがすき、と…」
「チャットなのかわたしなのかハッキリしてよ!!などと供述しており」
「なんだかよくわからないのがいいのでは?」
「そうですねまったくです」
「ふぁぼれよ」
「はいはい」