夢のカリフォルニア
サンフランシスコに行った。
2回目だ。何十日かのまとまった時間を初めて過ごした海外の街は、もちろん住んだとは到底言えないんだけど、ぼんやりと勝手を覚えていてそういうもんなんだなぁと思った。通りの名前や気に入ってたお店やおいしくないお菓子やジュース、同じものも違うものもあって何か不思議な気持ちになった。ノスタルジーとも違うし…そんなに愛着とか思い入れがあるわけではないし……。
2010年の夏からずいぶん遠くまできた。大学でだらだら生きてたわたしは本当にいけすかない人間で(今もいけすかない人間だけど当時よりは数段ましだ)(常に数年前の自分を呪いながら生きているけど、それはまぁなんらかの成長が見られるからだってことにしておきたい)世界を憎んでたし嫌いなものも多かったし、意味なく鉛筆を削り続けてわざと芯を折るみたいな感じだった。
ずっと世界の中心(わたしの)。
歳を重ねるのは思い出が増えていくからいいことだなって思えるようになったのそんな前じゃないや。同じ場所にきても同じものを見ても何かを下敷きにできるから考えることが多くなってきた。小さい頃は「はじめてのおつかい」を見て目を潤ませる母親がよくわからなかったけど今ならわかる。がんばれがんばれ、泣くな負けるないっぱい笑え。テレビのなかに呼びかけているように見せかけて本当は。
地下鉄の駅の近くのびみょーなメキシカンの店で巨大すぎるブリトーを持て余しながらiPhoneのKindleで桜庭一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」を読んでてヤバい感じだった。
自衛隊駐屯地が近い海辺のどんよりした町で夢なんて見ずに毎日現実と戦い続ける少女たちの人知れない戦闘の日々を、浮浪者がやけにアグレッシブに生きてて気を抜くと簡単に日本では嗅がない匂いの充満した昼間から薄暗い通りにぶちあたる別に暑くはないけど日が強い町の片隅でボルドーのネイルの少しだけ欠けた部分を親指の先でなぞりながら嗜んでいる。氷の溶けたコーラはまずい。
帰りの飛行機で後半一気に読んでラストでものすごく泣いてしまった。びっくりした。本を閉じてもぼろぼろ泣いてた。どんなに無気力でも退廃的でも世界を閉ざしてても明日は等しく来るからな。「愛って、絶望だよね」。一緒に戦うことじゃなくて彼らをあきらめさせないことを考えるようになったから、そういうことだ。大人になったな。大人になるの悪くない。
- 作者: 桜庭一樹
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どこへいってもすごく楽しいけど、結局トーキョー、めっちゃ大好きだ。娯楽に溢れすぎてて幻をいくらでも吸えて大麻なんてなくても何度でもトリップできて人がゴミみたいで時にはゴミが宝らしくて濁流みたいな情報に気持ちよく溺れまくれて、寝ても覚めても新しい夢が、続く。