インターネットすやすや

嘘ときどき現実、見方により法螺話となるでしょう

インターネットがいらないソーシャル

「あ、iPhoneにしたんだ、ケータイ」

「ううん、これiPod touch」

「おお、そっかなるほど。買ったの?」

「ううん、彼氏にお下がりもらったの」

「ケータイはそっちだよねえ」

「二つ折りで悪かったですね!」

「そういう意味じゃないってば!」

「おじさんたちは、ガラケーっていうんでしょ?こないだ言われてびっくりしたよ」

「あはは」

「今までケータイだったのになんで突然枕詞つくの?」

「だよねえ、ケータイだよね」

「ガラパゴスって呼ぶなら、絶滅危惧種として愛護団体のわたしたちも含めてちゃんと保護してほしいよ」

「保護しようとかじゃないよ!!」

「知ってるよ!!!」

「でも、長いよね、そのケータイ」

「うん、買い換えたいけどどうしようかな。周りでスマホが評判悪すぎるから迷う。使いにくそう」

Androidはまだ不安定かもね」

Android?って、要はスマホってことだよね?あってる?」

「だいたいあってるからそれでいいよ」

「彼氏にも怒られるけど、わたしの中だと“スマホとiPhone”の区別だよ」

「怒られるんだ、うける」

「別にそれで困らないもの」

「困らないよね」

「かわいいスマホ、かわいくないスマホ、iPhone、以上」

「あってるあってる」

iPod touch、便利だけどねー。絶滅危惧種保護団体としてはねー、パカパカ教徒だからさー」

「外じゃ使えないじゃん」

「失礼な!音楽は聞けますからね? 通信使いたいときはWi-fiルーターの電源いれる」

「へえ!そんなの持ってるの!」

「今家にネット引いてないから家でもこれだよ~」

「えっ」

「ていうか今パソコン壊れちゃって持ってない」

「えっっ」

「もう3ヶ月くらいかな?別になんとかなってる。ZOZOTOWN見たいくらい。買うほどでもないなーって思って。彼氏が次のMacbook出たら買い換えそうだし、お下がりもらおうかな~。小さいMacかわいいし」

「そ、それは……」

「びっくりした? だよねー。パソコンだいすきだもんねー。あいかわらず日夜怠らず警備してるの?」

「びっくりした!すごい!信じられない! 普段iPod touchでいろいろやってるの?」

「いろいろって?」

「学校の課題とか?」

「うーん、学校のパソコンでできるし、わたしそもそも大学じゃないしね。専門だからみんなに比べたらあんまりパソコン使う必要ないと思うよ、手動かしてつくるから」

「あとは?」

「メールとかモバイルサイトとかケータイから見るし、動画くらいかな」

「画面小さいじゃん」

「まぁねえ…でもどうしても大きい画面で見たいものなんてあんまりないよ、考えてもみなよ、何かある?映画とかだったら、DVD借りたらいいし、テレビはあるし」

「ふむ、じゃあ、アプリは?何使ってるの?」

Skype…?でもSkype動作が遅いからなあ」

iPodだと電話できないもんね」

「そうなんだよね」

「LINEは?」

「まぁ、たまーに。てか、あんまり電話しない」

「意外だ、めっちゃしてそう」

「会いにいけばいいからね」

「……すごい」

「なにが」

「会うんだなあ、そうだよなあ」

「え?どういうこと?今から会おうよって言って出かければ、回線、介して話す必要ないでしょ」

「そうだね、そりゃそうだ」

「話したきゃ会えばいいじゃん」

「おっしゃる通りです、ぱちぱち」

「待って、何に感心されてるのか全然わからない」

「いや、自分はインターネットに住んでるんだなって。むしろ深い森に迷いこみすぎだなって。目から鱗が」

「森なのに鱗?」

「お姉さん、それは慣用句でね…」

「ていうか、そう言うなら、ちゃんとメール返してよ、会おうと言おうにも電話もメールも」

「ごめんメールめんどうなんだもん」

「えー。ちょっと!住んでる意味とりもどして!」

「読んでるは読んでるんだけど返信がさあ…」

「何ならいちばんはやいの?」

「うーん……この状況を鑑みるとTwitterかなあ」

Twitterはすきよ、ガラパゴスなうちの子からもちゃんと見られるから」

「かわいいうちの子」

Facebookは、モバイルからリンク踏むと、エラーばっかりだよ」

「だめだねえ、高飛車だね」

「黒船さまがさしのべてくれなくたって、わたしはわたしでソーシャルに生きてるからいいの」

「自分の足と口でね」

「そうそう、ピンポーンて、インターホン押してね」