咳をしてもうたた寝しても
「あ、そっかあ、もう一人暮らしじゃないんだ」
「そうなんだよ、だからなかなか家呼べなくてごめんね、まぁでもだいぶ落ち着いたから、また来てね」
「うん行く行く、念願のしあわせ家族生活を覗きにいく」
「はい!念願のね!」
「ほんとだよ、昔からずっと言ってたよね」
「夢は叶うんだね!すばらしい。今まで生きてきてよかった。のろけますが史上最高に幸せです!!!」
「どうですか、そんな生活は」
「やっぱりあれだね、家に帰ってもひとりじゃないっていうのはちょっと気分が明るくなるよ」
「うんうん」
「というか、帰る気になる、呑み歩いてふらふらで帰ってくることが減りました」
「健全で幸福な生活を手に入れたおねえさんに拍手」
「帰ってきてごはん準備しないといけないとか、仕事遅くなっちゃったりするとごめんごめん許してねって思いながら急いで帰るとか」
「帰ってすぐに、ただいま!って抱きつくのでしょう?」
「抱きつくね!もちろんね!!」
「はいはいうらやましいうらやましい爆発しろ」
「ほら、健全な肉体に健全な精神を宿らせたいじゃないですか、精神安定じゃないですか」
「うんうん」
「家にいるときあんまりイライラしなくなった。安心感?包容力? あれよく考えてみたら実際包容してるのはわたしなんだけど…まぁいっか…」
「休みの日とか何してんの」
「いっしょに出かけるよ」
「超インドア派なあなたがどこに…」
「一人じゃなくなってから、近くにいいカフェを見つけて通うようになった」
「おしゃれ~~」
「テラス席とかで本読んだりしておしゃれライフしてる」
「楽しそう、うらやましい」
「旅行とかは行きにくいんだけどねえ、でもあったかくなったら一緒に行きたいなー」
「そうだよねぇなかなか都合が」
「そこまでの移動もそうだし、だめなところも多いからさぁ」
「今度どっか連れてきてよ、わたしも会いたい」
「いいよいいよ。仲良くしよう」
「うーん、いいなぁ、わたしもそんな子がほしい!!!!ください!!降ってこい!!!」
「うける」
「いやー、でもずっとわたしも飼いたいんだよね、いぬ」
「めっちゃかわいいよ。しかし、独り身のさみしさは軽減するけどな!それがいいか悪いかは測りかねます!」
「うむそれはそうでしょうね、安易に想像がつきますね」
「恋をとるか癒しをとるか」
「お姉さんは後者を?」
「いやわたしは二兎を追いたいんだけどね」
「…」
「人生ままならないね」